#3 重なる二つの影

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俺様は自分が悪者になっちまったような気持ちになって、思わず黙りこんじまう。 だけど、咲良は黙っていなかった。 「大丈夫ですよ。俺らは死にません」 咲良はこんなときなのに、笑っている。怒っても、泣いてもいない。 力強く笑っていた。 それはきっと、クズ刑事を俺様を信じてるからーー それが分かった。 「……それなら別室にモニターを繋いで……!!」 クズ刑事もまた門次さんを自分が殺してしまったかもしれない、そういう自責の念に未だに縛られてるみたいだった。 だからなかなか首を縦に振れないのだろう。 俺様も同じ立場だったら、そう言うかもしれない。咲良がどんなに人より頭の良い人間だったとしても、彼は普通だ。 普通に生きてきて、普通に過ごしてきたーー平凡な男。 なのにそんな彼をみすみす危険なところへ行かせるのは死ぬ確率を高くしているだけだ。 分かる、クズ刑事の気持ちは分かるーー だけど俺様には咲良の気持ちも痛いほど、分かるんだよな。
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