残った想いの底力

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壁の片側、天上にまで届くかという本棚にはお堅い民族神話から西洋文学、近代の哲学書に最近のライトノベルに至るまで数多くの書籍が並んでいる。 そんな中にあってやたらみすぼらしいスチール製のデスクと、逆に社長椅子のように豪奢な革張りの椅子に深く腰掛けるのがこの俺、柳川三角(ヤナガワミスミ)だ。 そして目の前で耳を塞ぎながら立っているのが今回の依頼人、大原芳樹。 社会人だという彼は、一見するとその辺の怖いお兄さんと同類にも見えるが、その相談内容は妹に取り憑いた霊を何とかしてほしいという、なんともまあアットホームなものらしい。 「んで?いくつか聞きたいことがあるんだが……。」 事前のアポでだいたいの内容は把握していたので、詳細を尋ねようとしたのだが、彼は眉を寄せるばかりで何も答えない。 「ああ、悪い悪い。」 それが大音量の音楽のためだと気付き、俺は音量を下げていく。 が、途中でそれも面倒になったので、結局は再生を止めた。 「んで?聞きたいことがあんだけど。」 だが、再生を止めたというのに彼の顔はいまだ曇ったままだ。 と、彼が口を開く。 .
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