残った想いの底力

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それを確認し、俺は改めて眠る彼女と、傍に立つ三人の男女を視る。 二十代後半の真面目そうな男とチャラい若い男が一人ずつ、それと派手な女が一人。 彼らとしばらく会話を交え、同時に説得。 結果として、彼らは事の顛末を見届けることを条件に大原さやかから離れることを約束してくれた。 そして、今の内に一言彼女に話をしておきたいという俺の意を汲み、一時的に解放された大原さやかは、やがてそっと瞼を持ち上げ、ベッドの脇に立つ俺を見据える。 「あなたは……。」 真面目そうな印象の子だった。 可愛いというよりは美人であり、まあ兄貴の方も見た目はなかなかだったなとどうでもいい考えに至る。 「君のお兄さんの知り合いだ。」 兄、と聞いて彼女の顔が曇る。 その感情が如何なものかは知らないが、言うべきことは言わなければならない。 「後は、俺が引き受ける。だから今しばらくは、彼らに任せて眠っておくといい。」 どこまで伝わったかは分からないが、俺が彼らに向けて頷くと、彼女は再び心地よい夢の世界にまどろみ入った。 それを見届け、俺はおそらく部屋の外で待機しているであろう芳樹の方を呼びに行く。 彼は変わらず眠る妹を見、それから一度俺の方をちらりと窺った。 そこからどうする気だったのかは知らないが、俺は彼に事を告げ部屋を後にした。 .
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