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「…油断した。」
ポツポツと髪を濡らす雨を見上げ、呟いた。
今日の天気予報は午後から雨だった。朝はまだ雨が降っていなかったし、学校に置き傘があるからと傘を持たずに家を出た。ここまではまだいい。
外を出た時から空に暗雲が立ち込めていた。学校から家まで歩いて約20分。走れば15分程でつく距離だ。
置き傘を使ってしまうのもなんだか勿体ない気がしたし、そのくらいまでなら雨も降らないだろうと鷹をくくって傘を持たずに学校を出たのが間違いだった。
歩き出してから約10分程した頃にポツポツと小降りの雨が降り出した。今更傘を取りに戻るのも中途半端な所まで来てしまった。走っても家に着くまでにはずぶ濡れになってしまうだろう。私服ならば濡れるのは気にしないが明日も学校があるのに制服がビショビショになるなんて事態は回避したい。
そんな事をぐるぐる考えている間に嫌がらせのように雨の勢いは強くなっていく。
雨が止むまで屋内で時間を潰したい所だが、残念ながら私の帰る田舎道には竹林と田畑が広がっているのみで都合よく店などない。
木の下でも構わないせめてどこかで雨宿り出来る場所がないかと辺りを見回すと、竹林の中にひっそりと佇む古びた屋敷が視界に入った。
(あんな所に屋敷などあっただろうか?)
一瞬疑問に思ったが、この辺りに廃屋があると、昔母に聞いた事があるのを思い出した。
普段の自分なら廃屋などに絶対近寄る事などなかったが、今の私にとっては絶好のスポットだ。
私は迷う事なく竹林の中に駆け込むと古びた屋敷に足を踏み入れた。
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