雨宿り

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足を踏み入れた屋敷は思ったより立派なものだった。廃屋というからにはあちこち傷んで雨漏りでもしているんじゃないかと懸念していたが、傾いているわけでもなく屋根に穴が空いているわけでもない。どうやらただの杞憂だったようだ。 ギシリと音を立てて縁側に座り込む。なんにせよ雨を凌げる場所があって助かった。おかげでわずかに髪や靴が濡れたが大した被害にならずに済んだ。 軒下から曇った空を見上げる。雨は未だ止む気配はない。もうしばらくはこの屋敷にお世話になる事になりそうだ。 「…暇だなぁ。」 ため息と共に小さく呟き、周囲を見渡す。石で出来た塀の向こうは青々とした竹に囲まれている。竹林に覆われ外からは見えづらい造りはまるで誰かの隠れ家のようだ。 この屋敷自体朽ちた様子はあまり見えないが、築何十年では済まないだろう。広さはそんなにないようだが、歴史ドラマによく出てくる立派な日本家屋によく似ている。 そんな事を考えながらぼんやりしていると、突然後ろから声をかけられた。
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