雨宿り

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「これはこれは… 珍しいお客様、だね。」 その人は私を見て一瞬目を丸くすると穏やかに微笑んだ。 「雨が…降っているんだね。」 外に視線を向け呟いたその人の言葉にハッと我に返る。 「す、すみません! 人がいるなんて、思わなくて…」 しどろもどろになりながら弁明する私を見てその はクスリと笑う。 「…そんなに慌てなくても大丈夫だ。 なにも取って食いやしないから。」 そう言ってその人は家の奥に引っ込んだかと思うと白い手ぬぐいを持って戻ってきた。 「これを使うといい。 ちゃんと拭いておかないと風邪をひくよ。」 「い、いえ、お構いなく…」 他人の家に勝手に上がった上にそこまで好意に甘えるわけにはいかない。 必死に首を横に振る私を見てその人は苦笑いを浮かべて私の隣に膝をつく。 「仕方のない子だな。」 「!」 気づくと視界が白い布に覆われていた。そのまま大きな手でわしゃわしゃと頭を掻き回される。 いきなり髪を拭かれた事は勿論、その人が触れられた事に驚いて私は目を丸くした。  
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