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その頃――ユーホはとある廃ビルの前に立っていた。かなり急いで走って来たためか、息は上がっており、膝に手をついている。
息を整えるとユーホは再び携帯を取り出し、届いたメールを確認する。それには間違いなくこのビルの三階が示されていた。
その文面はかなり慌てているのか乱文となっているが、それでも自分に対し必死に助けを求めて来ているのがユーホには読み取れた。
「……よし」
ユーホは意を決すと、ガラスの割れたドアを開け、少し奥にあった階段を上って行く。
三階につくと、そこは一つの階でワンフロアとなっていた。メールをもう一度見ると、仲間たちはここに隠れていると書かれている。
「みんなどこだ?」
ユーホが呼びかけるも、返事はない。どうしたのかと疑問に思いつつも、警戒しているのかもしれないとユーホはフロアの中に足を踏み入れ探し始める。
だが探せど探せど、仲間たちの姿は見えなかった。
そもそもこのフロア自体、崩れた壁の破片で散らかり、それ以外に柱などがあちらこちらに見えるが、それだけだ。とても隠れる場所として適しているようには思えなかった。
「……なんか変だな?」
そうユーホが疑い出した時、ユーホの後ろで崩れた壁の破片を踏みつける音が聞こえてきた。
ようやく見つけたかとユーホが安心した表情で振り返ると、後ろを見た瞬間、その顔は意外なものを見たような物へと変化した。
「…………板垣?」
ユーホの後ろに立っていたのは、右手に〝金色のリング〟を装着したクラスメイト、板垣であった。
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