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アイヴスの指が嫌味な様子でテーブルを叩くと、選者の顔は悩ましげに崩れた。
「セィリアン嬢に見つめられて惚けてる男性は多数目撃されているし、異性には好意的な評判が大多数なのは確かだが、誘惑された事実を証言できる奴がいないんだ」
「つまり、状況証拠は揃っているが、直接証拠がないのか」
「セィリアン嬢が美人なのは事実だから問題ないさ~」
アイヴスはお茶で喉を潤してから、促した。
「さッ、先へ進めてくれ」
番付選者は気を取り直してページを繰った。
「七位はアルデュウィン家の誇るグウィネット嬢だ。兵学科武術専攻で、金髪を三つ編みにまとめて大剣を揮う姿は、まさに男装の麗人。顔とスタイルは超一級品だが、着飾ることに興味がないのと、『ドタバタ姫』と揶揄される難のある言動により、順位を落とした」
アイヴスは感心したように唸る。
「ニ部門でランクインか。凄いな」
「いや、三部門だ。お前と違って剣士部門でも五位入賞を果たしている」
アイヴスの肩が劇的に落ちた。
「いちいちボクを引き合いに出すな」
だが、ウィディスは次の順位を読み上げようとして、顔を曇らせる。
何かあるのか、アイヴスは問いかけるような表情で待った。
苦悩に歪む口が重苦しく開いた。
「次は・・・・・・」
「次は?」
「次はリフィディス・ペルズィ。以上」
話にならないとアイヴスは手のひらでテーブルを叩いた。
「何なんだ、その説明は。六位の美貌について語ってくれ」
長い腕がすばやく×の字を作った。
「無理。思い出したくない」
「思い出したくないって、何を?」
アイヴスは食い下がった。
見ると、黒髪の青年は目を閉じて何かを忘れるために無我の境地へ旅立とうとしている。
瞼を開くと、彼は潤み気味の瞳で哀願するように言った。
「アイヴス、おまえは、二年前に入学してきて以来の、俺のとても大切な友人だ。そして、俺はおまえにとって親友といっていい存在だ」
「ベーコンを強奪するまではな」
ウィディスはすげない返事を無視して続けた。
「そんな刎頸の友に、リフィディス・ペルズィを語れなんて、過酷なこと言わないよな」
ウィディス・カドゥワル、彼は傍若無人番付なら、間違いなく五本の指にはいるアルヴォン有数の暴れん坊である。
その彼が何を恐れるというのか。
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