蜂蜜だってなんのその

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「土方さん、私、今幸せです」 彼の束ねていない長い髪を撫でながらそう言ってみると、「私の方がだ」と口付けを落とされました。 「ただ、土方さんではなく歳三とお願いしたいがな」 やっぱり、まだまだ子供らしい人。 今だけですよ、と伝えてから彼の耳許で「歳三さん」と囁けば嬉しそうな彼の返事が返ってきました。 外はもう闇に包まれ、油が底をつきかけて、先程からすきま風によって火がチリチリと消えては着きを繰り返しています。 本来ならば屯所中夕食が無いと騒いでいてもおかしくないのですが、しんと静まり返っていて、誰が今の状況を諭したかは分かりませんが、それが有り難いとばかりに土方さん──いや歳三さんも私も互いに一糸纏わぬままじゃれあっているのです。 新撰組の在り方として、これはいかがなものかと、また思考の片隅がとぐろをまきそうになりますが、それもいとも容易に彼による甘い食指によって葬られるばかり。 「由希……」 いくら時が経とうとも変わらぬ熱のこもった囁きは、私をいつまでも虜にさせて、何時になれば解放されるのか、それでも離されたくはないという葛藤が私の胸中に蔓延るだけなのです。
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