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暗闇の中を走ること十分程。
ようやく森を抜けたところで私は足を止めました。
ねぇ大御神様、願いを叶えてくださらないのですか。
私が願ったことは何一つ無いじゃありませんか。
高い建造物がないこの場所は私が知る京都の姿はまだなくて。
「まだ」と思えるあたり、私の頭はおもったより冷静なのでしょう。
私の予測は物理的なものを遥かに超越しています。
あり得ない、こんなことがあってはいけないはずだと自分に言い聞かせますが、私の視覚はそれを否定せざるをえない風景をとらえているのです。
下鴨神社は本物のはず。
少し歩いた先にあった鴨川デルタもちゃんと、賀茂大橋も造りは違えど存在していて。
無いのは薄く明けてきたというのにそびえ立つ姿がないビル達。
そして賀茂街道に姿がない車、信号。
橋の上から見るときれいにまだ整理されていない川岸。
早朝から歩く人は以外に多くて、そしてそれは全員着物を来ていて。
物珍しそうに見られている事も構わずに、私は街中へと歩いていきました。
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