闇夜の京にて

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「なぜここにいる」 目の前に立つその方はじっと私を見つめてきます。 いやそう言われても。と返したいのですがうまく声が出ません。 まだ先程すくんでしまった影響があるからなのでしょう。 それに気づいてくださったのか、冷たい空気を纏っていたその方はふっと笑い、私の横に腰かけました。 「すまぬな、怖がらして」 一気にその場の空気が軽くなっていきます。 意外と親しみやすそうな人です。 強張っていたほほが緩み、ゆっくりと息を吸いました。 「平気か?」 先程の鋭い言葉が嘘のように優しく私に問いかけてきます。 私もようやく落ち着けるようになったので、小さくはいと答えました。
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