蜂蜜だってなんのその

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* 布団に潜り込みながら、お互い話もせず、ただ相手の体温を抱き締めながら感じ取っていました。 人肌ほど安心でき、確信出来るものはない。そんなこと頭の隅で実感していると、彼──土方さんが私の名を呟きました。 「もし、もし叶うならばと、儚い私の夢だと思っていた。故に今この状況があるのが信じられんのだが──、こう長い間触れていれば実感は次第と濃くなるものだな」 「えぇ……私もです」 もしかすれば、まだ私の中には公平に対する罪悪感が残っているのかもしれません。いや、それはあるのでしょう、今この瞬間も思考の隅では沢山の想いが渦を巻いて私を苦しめているに違いありません。 それでも心がまたとなく軽いのは、この空間を愛し、溺れているからで、甘くとろけてしまいそうな蜜度に酔いしれてしまっているのでしょう。
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