狸の咆哮

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家まであと200メートルというところで、雫が私の鼻の上にポツリ。 そして瞬く間に雨足が強くなってきます。 看板も見ず、とりあえず私は近くにあったお店に避難しました。 ここの店主に傘を借りて家に帰ろうと奥を覗き込むのですが、人影は無し。 骨董屋と思われるこのお店には沢山の器から掛け軸やら色々積み重ねてあり、少々私の心も弾みます。 ゆっくりと品物を眺めながら探索していくと、長い土間の一番端にそれはいらっしゃいました。 大人ほどある背丈に大きな手足。 茶黒い毛並みの中にビー玉のような目が埋まっていて。 正しくこれを大狸と言わなければなんと言うのでしょうか。 あまりにも偉大なそのお姿には畏怖の念すら抱いてしまいます。 私はしばし見入ると、ゆっくり一歩下がり「なむなむ」と拝んでみました。 すると、 あのビー玉のような眼がにょろりと動き、私の眼を捕らえるではありませんか。 そんな、そんなことがあるものかと、私は足がすくみ、動くことができません。 非現実的な現実。空気がピリピリと振動し始めます。 そして、じろりと私を捕えて、血の気だった顔が目の前に迫って来ました。 大狸はこれでもかというくらいに体を反らしています。 なに、ちょっと待って、何を。 そしてその瞬間、気が遠退いていくのがわかりました。 大狸様は咆哮なるものを私に浴びせかけたのです。 私の体と周りの財宝が共鳴して、大きな振動が来たかと思えば、私は底へと沈んでいきました。
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