いち、

2/31
前へ
/108ページ
次へ
  抵抗しなくなった女。 まるで魂がここに在らずの状態。 唯一彼女自身がいると感じられるのは 彼女が腰を引かれながらも自分で歩いているということ。 なぜ抵抗を止めた? 諦めた? 男に適わないから? 抵抗はただの素振りだったのか? ―――――― 俺はラブホで情事を済ますと、彼女に別れを告げられた。 俺はプライドが許さなかったのか「あっそう」とだけ言い、金を置いて部屋を出た。 独りになり、ラブホ街をとぼとぼ歩く。 不意に目についた一組のカップル。 まさに冒頭の男女。 初めは抵抗していた女。 だけど急に気力をなくした。 「……カップルにしては珍しいな」 彼女の表情は決して喜んでいるようには見えない。 むしろ嫌そうな……諦めてるような……。 そんなとき、彼女と目が合った。 一瞬ビクリとして、すぐさま俺に助けを求めるように見てきた。 ……そいつ彼氏じゃねぇの? 嫌ならなんでこんなとこに来た? 俺はどうするかも考えずに2人の元まで早歩きで向かった。 .
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

201人が本棚に入れています
本棚に追加