第1章 奇妙な取引

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美貴さんは、どうしても、邦彦さんとつきあいたかったみたい。 あたしの存在が、本当に邪魔だったみたい。 だから、総務課の女子全員と組んで、ひと芝居打ったの。 半年前から、総務課の女子が、お財布を盗まれる事件が頻発するようになって。 被害額も、かなりの金額になって。 先日、あたしのロッカーから、盗まれたお財布が、全部、出てきたの。 中身は抜きとられて、お財布だけ。 もちろん、あたしはやってない。 ちゃんとそう言ったけど、誰も信じてくれなかった。 そう、誰も。 ……邦彦さんも。 あたしは課長に呼ばれて、退社を迫られた。 辞表を出せば、警察沙汰にはしないって。 あたしに、選択の余地はなかった。 会社を辞めさせられても、邦彦さんがいてくれれば、それでよかったのに。 邦彦さんは、あたしから去っていった。 会社を辞めた後で、邦彦さんが美貴さんとつきあい始めたことを知った。 あたしは、何もかも失っちゃったの。 もう、お先真っ暗。
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