第1章 奇妙な取引

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文字通り、あたしは飛び上がった。 弾かれたように、ふりむく。 スーツ姿の男性が、目の前に立っていた。 サングラスをかけているので、年はよくわからない。 髪型から察すると、三十代くらい? 背が高く、肩幅ががっちりしている。 誰? まさか、警察の人…? 脚がガクガク震え出して、あたしはその場にへたり込みそうになった。 「君、万引きしたよね、今」 男の人は、ニヤリと笑って言った。 あたしは、顔から血の気が引いていくのを感じた。 見られていたんだわ! どうしよう…… 「そのネックレス?今、盗んだの」 声もなく立ち尽くすあたしに、男性は、なおも言いつのった。 何と答えていいのかわからず、あたしは、ただ小さく唇を震わせた。 男性は、右手に持っていたデジカメを、目の高さに掲げてみせた。 「バッチリ写真撮ったから。言い逃れようとしても、無駄だよ」 ……ああ、どうしよう…… 「話があるからさ。一緒に来てくれる?断ると、君が困ることになるけど」 有無を言わせぬ口調で言って、男性は、傍らに停めてあった車のドアを開けた。
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