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文字通り、あたしは飛び上がった。
弾かれたように、ふりむく。
スーツ姿の男性が、目の前に立っていた。
サングラスをかけているので、年はよくわからない。
髪型から察すると、三十代くらい?
背が高く、肩幅ががっちりしている。
誰?
まさか、警察の人…?
脚がガクガク震え出して、あたしはその場にへたり込みそうになった。
「君、万引きしたよね、今」
男の人は、ニヤリと笑って言った。
あたしは、顔から血の気が引いていくのを感じた。
見られていたんだわ!
どうしよう……
「そのネックレス?今、盗んだの」
声もなく立ち尽くすあたしに、男性は、なおも言いつのった。
何と答えていいのかわからず、あたしは、ただ小さく唇を震わせた。
男性は、右手に持っていたデジカメを、目の高さに掲げてみせた。
「バッチリ写真撮ったから。言い逃れようとしても、無駄だよ」
……ああ、どうしよう……
「話があるからさ。一緒に来てくれる?断ると、君が困ることになるけど」
有無を言わせぬ口調で言って、男性は、傍らに停めてあった車のドアを開けた。
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