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……否、彼方を音速で走っていた。伶人は身体能力リミッターの枠を取り外したのだ。全力を出して疲弊しないように脳が身体能力にリミッターを掛けているのは有名な話だが、伶人はそれすら自らを超越させたのである。
――相手を見ないと分からないが、簡単に済みそうじゃないのは確かだ。
やがて、伶人の目に、黄色い着物に赤い帯の少女の姿が飛び込んだ。背の低い、短髪の日本人形のような容貌だ。
「……くすくす、また人間が来たのね」
「そんなに人間に会いたかったんだな」
「会いたい? 私はこんな所に来るつもりなんかなかったのに」
「そうかい。で、お前は何者なんだ?」
少女は、おかっぱの黒髪の下の漆黒の目を鈍く光らせた。
「その前に聞きたいの。あなたこそ何者かしら? 見たところ只者じゃないみたいだけど……」
「それもそうだな。俺は中村伶人、神主さ」
それを聞いて、少女は口角を上げた。
「……何だか中島の巫女にそっくりね」
「で、もう一度聞くが、お前は一体何者なんだ、『座敷童子』よ?」
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