神主と禅僧

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「お疲れ様。今日はこのくらいですな」 「ありがとう」 再び庫裏に戻り、卓袱台を挟み、互いに湯呑みを片手に談笑する伶人と玄水。小坊主達は修業として神奈川の鶴見という所に行っており、今は留守である。 「ところで、先程仰った『色々』、どのような事がおありでしたのかな?」 伶人は番茶を啜って答えた。 「実は、森で迷子を見つけて、暫くうちの神社で居候させる事になってな…」 「ほう、迷子とは、難儀な事ですな」 玄水は落ち着いた物腰で返した。 「どうも神社の仕事に興味を持っているらしくてな、臨時の巫女をやらしてんだ。今頃一人で留守番してるはずだ。まあ、どうせ真理夫達も来てるだろう」 「桐原家のお子さん方がいらしているなら、安心ですな」 「違いない。まあ、凛子姉が一緒ならなお安心だな」 二人の聖職者は――といっても、違う宗教だが――一杯ずつの番茶で暫く話の花を咲かせていた。
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