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そう言って上がってきた二人。伶人の昔馴染みの桐原姉弟だ。
姉の凛子はすらりとした長身で、綺麗な白髪、もとい白銀の長髪を流していた。メタルフレームの眼鏡の下に輝く灰色の瞳は、名前の通り凛とした芯の強い眼光を携えていた。
弟の真理夫はウェーブのかかったゴールドを帯びた茶髪を器用に乱し、白い肌に黄土の瞳が西洋人のような印象を与える。黒のハンチング帽がそれを強めていた。
「まあゆっくりしていって下さい。真理夫は何も盗むんじゃないぞ」
「馬鹿にするなって。盗むもんか。死ぬまで借りるだけだぜ」
「それを世間一般に『盗む』って言うのよ」
その漫才のようなやりとりも、若知神社では日常茶飯であった。
「相変わらずだな……で、まあ取り敢えず茶菓子でも」
そう言った伶人は、さっと手元に大福を三つ出し、二つを桐原姉弟に差し出した。
「お、サンキュー伶人」
「伶人君ありがとう」
「どうも」
伶人は目だけで笑った。
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