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「午後の、……予定は、聞いておりませんが」
これだ。
これを聞くのに私は今日、いつも以上に緊張している。
あぁ、なんでこんな日に大雅さんいないんだろう。どうしてもう一人の事務員・香田さんもいないんだろう。
二人だから、余計に緊張するんだ。
だって、だって今日は――
ドキドキしすぎるのを押さえられなくて、不必要に手帳を持つ手に力がこもる。
顔が赤くなっている気がして、より顔を手帳に近づけて俯いた。
するとカサと音がして、志貴が動いた雰囲気が漂ってきた。顔でも上げたのかもしれない。
「何の確認だ?」
言われた瞬間、恥ずかしさのあまりに心臓が止まりそうになった。
いつもは予定が無い時間のことなんて尋ねない。
今日彼にあえて聞いたのは……もしかして、今日がクリスマスイブだからワザと空けているのではないか、なんていう甘い妄想ゆえだ。
「い、いえっ、べ、つに」
たどたどしく否定しながらも心はざわざわして落ち着かない。
ほら、やっぱり恥ずかしい思いをした。
私だけだったんだ、初めてのクリスマスイブだとかで浮かれていたのは。
もしかして、だけど……何か計画でもあるんじゃないのかって、淡い期待を描いていた。
彼氏が出来たんだもん、私だって夢見たっていいじゃないか。
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