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恥ずかしいあまりに目尻にぼわっと滲むものを感じる。
なんだろう、別に落ち込むことでも何でもないのに。
今日仕事をしてる人は世の中にごまんといるし、私だけじゃない。
だけどなぜだかすごく悲しくて寂しい。私だけが一人盛り上がっていたようで。
珍しく綺麗にハーフアップして、カールを巻いてみた髪も。
大事に封印したままにしていた指輪を、右手の薬指に嵌めてきた自分も。
――私のこと、好き、なんだよね?
どうしてか、どんどん弱っていく私。
こんなの自分じゃないって思うのに、志貴を前にするとだんだん自分が分からなくなってくる。
「午後は書類整理だ」
「はい」
そのまま、一生懸命練習した30度の角度なんて捨て去って、ぶんっと勢いよく頭を下げて早足で小さな給湯室へ逃げ込んだ。
この事務所の中で、唯一の私の安住の地がここだ。
「……馬鹿みたい」
滴が零れ落ちる前に、と右手の人差し指の背を瞼の下で水平に線を引く。
香田さんに勧められた涙で落ちにくいというマスカラは、どうやら本物みたいで全く指は黒くならなかった。
はぁ……
クリスチャンでもないのにクリスマス如きではしゃいでんじゃねーよ、とでも奴は思っているのかもしれない。
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