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「な、なによっ」
つい可愛げもなく、仕事中だってことも忘れて叫ぶとまたフッと笑っているのを感じる。
悔しい、すっごく悔しい!!
「わ、笑ってないで、なんか言いなさいよっ」
今までのしおらしさはどこへやら、と思いつつ声を荒げると、志貴は私なんか無視して持ち上げた右手の甲に柔らかくて温かいものを押し当てた。
それが離れてもう一度ちぅと音を立てる。
――ど、どうしてそんな恥ずかしいこと出来るの!?
叫びだしそうなのに、私はそれに腕をプルプル振るわせるくらいのことしかできなくて、それ以上何の言葉も飛び出てこない。
はくはくと、声にならない声を出しながら口を動かすのが精一杯だ。
「クリスマスプレゼント」
「え……?」
そう言われて、ようやく唇から解放されて右手を見ると、肘の少し上あたりにまで滑り落ちたブレスレットが見える。
すごく綺麗で、ちゃり、と音がしたのは星形の小さなチャームが擦れたせいだと分かった。
恐る恐るくるりと体を反転させると、少し見上げた先に志貴の顔が見える。
にぃっと口角が上がるのが見えて、私はそれだけで心が落ち着かなくて太鼓を叩いた後の膜みたいに、顔の表面が細かに震えている気がする。
まさか、志貴がそんなものをくれるなんて、と言う喜びの気持ちで身体がふわっと浮いてしまいそうだ。
けれどそれもわずか3秒で叩き潰された。
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