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「という名の、手錠だ」
「――は?」
べしっ
彼の胸ポケットに入っていたであろうスケジュール手帳が、私の額に飛んでくる。
「なっ!?」
「明日の予定はないからな」
「はぁ!?」
「それと、今晩」
「今晩?」
意味の解らない一方的通知の数々に困惑する私を余所に、奴は淡々と説明を続ける。
「お前は今日、俺の家に泊まりに来いよ。だから早く仕事やれ」
「な、なんで!?」
意味が分からずに発狂すると、奴は何かよからぬ笑みを浮かべている。
なんなの、その腹黒さ満開の笑顔は!!!
「理香。今日はクリスマスイブって知らないのか?」
「し、し、知ってるわよ!!」
信じられないことを志貴から言われ、私は顔を真っ赤にした。
すると奴はクツクツ笑いながら、私の右手を取って指輪の嵌った薬指を二度さする。
触れられた指先が、途端に発火しそうになった。私が志貴に貰ったこれをしてきたことが、ばれてしまったことが恥ずかしい。
それに……急に近づかれると、どうもこうもびくついて仕方ない。
下がりきれないのに無理矢理一歩下がると、壁と奴の腕で囲うように頭の両サイドに手を付かれた。
万事休すだ、逃げられない。
「い、言っとくけど。わた、私。泊まりとか、言われても」
「理香ちゃんのお泊りセットとやらを、お前のお母さんから預かっている」
「はい!?」
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