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そこまで言った瞬間、後ろから多量の液体がかかった。その液体は生暖かい、鉄の様な匂いのする液体であった。その液体は警察官の頭部から次々と溢れ出ていた。
「う…嘘だろ。こ、こんな、こんなこと…」
佑はそう言うと口を抑えてトイレへ駆け込んだ。
「佑君、待って! 今動くと危ないわ!」
絵理はそう言ったものの、無理だということは百も承知であった。
「俊君は大丈夫?」
「大丈夫ですけど、生はちょっとキツいです。」
その様なやり取りをしている内に警察官の頭部からは血が今もなお出続けていた。
その血はまるで2人を追い詰めるかの様に広がっていった。
この時俊はかなり我慢をしていた。
迫り来る鮮血と敵への恐怖、交番全体に広がる鼻をさす様な鉄の匂い、その匂いのお陰で自然と出てくる涙。
よく「グロ耐性持ってるからグロ画像とか動画なんて楽勝」等と言う者がいるが、この場に居合わせたならどの様な反応をするのだろうか。死体愛好家ならまだしも、グロ耐性がどうのこうの言っている者達は即座に目をそらすか、佑の様にトイレへ直行、又はショック死してしまうだろう。
そんな所で撃たれない様にじっと待機しているのである。
「おかしいわね。撃ってこない…。」
「俺らを狙ったけど、風とかで軌道がずれて、たまたま警察官に当たった、ってことじゃないんですか?だから次は一撃で仕留めに来るつもりとか…。」
「その可能性は低いわね。一撃で仕留める、ってのは合ってるかもしれないけど。」
「何でですか? 他にどんな可能性があるんですか?」
「そうね、理由は2つあるわ。まず一つ。この警官は額のど真ん中を打ち抜かれてるわ。それともう一つは絶対に風の影響じゃないと言える理由よ。」
そう言うと絵理は外を指差した。
そちらに目をやると外には帰宅ラッシュでごった返す人達で溢れ返っていた。
この交番は駅からかなり近いうえ、スーパーや雑貨屋等も建ち並んでいる為、このような状態は平日は普通の光景なのである。
最も、この時は既に19時30分を過ぎていた。
「…! こんな人込みだってのに弾を当てたのか!」
「そうね。相手はかなり腕が立つらしいわよ。どうする、応戦してみる? 最もこっちには私の銃と、この警官のエアウェイトくらいしか無いけど。」
この時見せた絵理の微笑みは恐ろしさと愛らしさの二つを兼ね備えた笑みだった。
「………。」
俊は迷った。相手は凄腕のスナイパーである。そんな相手を倒す…
「そういえば、敵は別に殺さなくても良いんですよね? 捕らえるだけでも良いんですよね!?」
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