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「そうよ。でも約3、4メートルまで近付かなきゃいけないわよ? それに相手の銃はボルトアクションとも限らないわ。まぁ、かと言ってドラグノフみたいな五月蠅い銃じゃないのは確かだけどね。」
俊と絵理は微笑んだ。
銃の事を知らない人がこの場にいたら、この会話にはジョークが含まれているという事に気付かないかもしれない。
普通に会話をしているだけに思うだろう。
現時刻-19:53
俊は自分の顔を叩き、気合いを入れた。
自分でも湧き上がってくる闘志が分かるのである。
-死んだらそれまでか。いや、こんな事を考えちゃいけないな。絵理さんを信頼しなくちゃ。
数分前、絵理と俊は作戦を考えていた。
「お~い、佑~。出て来いよ~。お前がかなり必要なんだよ。」
そうトイレの前で言うと、トイレの扉が開かれた。
中からは顔が青ざめ、ゲッソリとした顔の佑が出て来た。
俊は思わず笑ってしまいそうになってしまったが、舌を強く噛み付けてそれを抑止した。
俊は小声で佑に告げた。
「しゃがんで奥に行け。絶対に立つなよ。立ったらその大切に育てた頭が無駄になるからな。」
「皮肉たっぷり含んだ忠告有り難う。で、なんか食べる物無い?胃の中のもの全部出たから、腹減ったなぁ。」
佑はそう言いつつ奥へ向かって行った。
-佑は昔から大食いだからな。
そう思い、俊は昔の事を思い出した。
眼鏡をかけ、外見からしても秀才という感じの彼だが、頭脳の他に、胃袋の大きさも学年で上位にいる。
小学校の卒業式の後、佑や俊達のクラスだけラーメンを先生のおごりで食べに行くことになった。
その時の佑の食欲はひどいもので、醤油ラーメンとチャーシューメン、塩ラーメンを1人で平らげたのである。
あの時の先生の泣き顔は今も覚えている。
-あの頃はまだ静かだったな…
俊達が小学生の頃はまだ銃の規制が今よりも厳しく、ライセンスが無ければ銃に触れる事さえ出来なかった。
しかし、3年程度でこの変わり様である。
そう思うと俊は怒りに駆られた。何処にもぶつけ様の無い怒り。
-落ち着け。絵理さんと佑の作戦が覚えられなくなる。
そんな俊の様子に気付いた佑が声を掛けてきた。
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