第一章

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「幸太郎」 「何? 敦さん」 情事の後、僕と敦さんはベッドの上でじゃれ合ったのち、やっと一息ついた。 男二人の体重で部屋のベッドは少し動くだけでも軋む。 皺の寄るシーツが情事の後だといことを、生々しく物語っていた。 「俺、洋子さんと結婚することになりそうだ」 「どういう、こと……」 衝撃的だった。 しかし敦さんの表情は今までとさほど変わらない。 出会ってから染めた髪の毛は、サイドテーブルのライトに照らされて、いつもより明るい茶髪に見えた。 「結婚、するの……?」 「するしかないんだろうな……まあ、俺が出ていくとう選択肢もあるな」 「それじゃあ、僕は?」 置いて行かれてしまうのだろうか。そう考えただけで、黒い感情湧き起こるのを感じた。 「可愛い幸太郎を置いていくわけないだろ。どんな手を使ってでも連れて行くさ」 優しく頭をなでられて、湧き起こっていたはずの黒い感情がスッと消えてしまった。 やはり僕はこの人しかいない。 この人じゃないと僕の心の隙間を埋められはしない。 「俺の心は幸太郎の物だから」 「本当に?」 「ああ、誰にも渡さないよ」
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