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「幸太郎」
「何? 敦さん」
情事の後、僕と敦さんはベッドの上でじゃれ合ったのち、やっと一息ついた。
男二人の体重で部屋のベッドは少し動くだけでも軋む。
皺の寄るシーツが情事の後だといことを、生々しく物語っていた。
「俺、洋子さんと結婚することになりそうだ」
「どういう、こと……」
衝撃的だった。
しかし敦さんの表情は今までとさほど変わらない。
出会ってから染めた髪の毛は、サイドテーブルのライトに照らされて、いつもより明るい茶髪に見えた。
「結婚、するの……?」
「するしかないんだろうな……まあ、俺が出ていくとう選択肢もあるな」
「それじゃあ、僕は?」
置いて行かれてしまうのだろうか。そう考えただけで、黒い感情湧き起こるのを感じた。
「可愛い幸太郎を置いていくわけないだろ。どんな手を使ってでも連れて行くさ」
優しく頭をなでられて、湧き起こっていたはずの黒い感情がスッと消えてしまった。
やはり僕はこの人しかいない。
この人じゃないと僕の心の隙間を埋められはしない。
「俺の心は幸太郎の物だから」
「本当に?」
「ああ、誰にも渡さないよ」
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