一章~因果分子~

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刹那はコロンとボールペンを机に投げ出し、立ち上がって冷蔵庫からアルミ缶のお茶を取り出す。その口を開け、ゴクゴクと飲んでから、その缶を机の上に置き、刹那は椅子に座ると背もたれに体重を預ける。 「『世界』には、許容範囲というものがある。少しイレギュラーな事が起きても、それが『世界』の範囲で起こった事なら、自己修復ではないが、それを元に戻そうと見えない力が働く」 『つまり、この世界には刹那と対等な存在がいて、その存在は二つとしていらない。そして、元々この世界の存在ではない刹那を、どうにかして消そうとしてる…、というところですか?』 「少しアバウトだが、そういう考えで間違いだろう。…そろそろ風呂にでも──」 「こんばんはー、刹那くーん!」 突然、バンッと耳障りも甚だしいほどの音と同時に、ある女性がノックもせずに堂々と部屋に侵入してきた。 「…どうして入ってきた?」 「いやいや、気にしない気にしない」 刹那は苛立ちを表しながら女性を睨むが、女性は全く臆する素振りは見せない。 女性は、林実華(ハヤシミカ)。刹那の通っている大学の機械学部ロボット工学科の三年生だ。 今は風呂上がりだろう、黒いタンクトップにデニム地のショートパンツを穿いている。 特徴は、刹那の恩人の一人である雅帝の白髪を茶髪にし、髪が短いといったところか。 「それよりもー、一緒に飲まない?」 「俺はまだ風呂に入っていない。それに、今日はそんな気分ではないぞ」
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