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「またまたぁ~。もうお酒も飲めない年頃じゃないでしょ~」
「確かに二十歳は超えている。だが、飲んでいい時と悪い時があってだな…」
「いいからいいから。じゃ、さっさと風呂入ってきなさいよ。わたしはこの部屋で待ってるから」
「何を勝手に…」
「いいから行く行く」
刹那は着替えを持たされ、半ば強引に部屋から追い出された。
仕方ない。
こうなってしまっては、付き合うしかないだろう。
何にでも完璧にこなし、18歳にして大人の雰囲気を醸し出していた帝に対して、実華は全く正反対だ。性格は大雑把でがさつ。よく刹那をよく頼りにしてくる。しかし、敬語などで歳の差を嫌うところは、帝そっくりだ。
刹那は40分ほど風呂で時間を費やし、着替え用の生地が薄い夏用のジャージに着替えて部屋に戻った。
「…何をしている?」
刹那が部屋に戻ると、小テーブルの上には、刹那が風呂に入っている間に用意したのであろうチューハイ缶の類で敷き詰められ、実華は酒を片手に、先ほど刹那が書いていたパラレルワールドの図を興味深そうに見ていた。
「刹那ぁ。君、この平行世界説やパラレルワールド説っていうのってさ、つまり、世界相対性説やミラーワールド説の事?」
「…人の話を聞け」
「いいから答えなさいよー」
「…ああ、そうだ。以前も言ったが、俺は記憶喪失の類でもなければ、この世界の人間でもない」
刹那は自由奔放な実華に苛立ちを覚えながら机の前の椅子に座る。
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