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「そう怒らないでよ。私は、刹那の言ってる事は、強ち嘘じゃないって思ってるから」
「実華…」
「別の世界で生きてるもう一人の自分…。何だかファンタジーじゃない?」
「…俺は、実感したかもしれない。だから、その意見には答えられそうにないぞ」
刹那は溜め息混じりで適当な缶を手に取って口を開ける。
「ねぇ、刹那ってもしかして、刹那の世界の私と会った事ある?」
「ああ。難しいかもしれないが、今俺の目の前にいる実華とは全くの正反対の人間だ」
「すごーい! 何だかそっちの私は賢そうで悔しいけど」
そう言うと実華は「キーッ!」と明らかにわざとらしく悔しがり、チューハイをゴクゴクと飲んでいく。
刹那はあまり酒に強い方ではないので、一つの缶を少しずつ飲んでいたのだが、気付けば、テーブルの上は空き缶だらけになっている。刹那が飲んだのは、せいぜい二本程度。
つまり…、
「プハーーーッ! ウ~、ヒック」
犯人は完全に“できあがった”コイツ、実華だ。空き缶はいつの間にか、10本近くある。
当の帝本人も、顔をほってりと赤くし、垂れ目になっている。
「おい実華。そろそろ抑えた方が良いんじゃないのか…?」
「あ~い? 何を言ってんのら刹那きゅん! 夜はまだまだこれからりゃー!!」
完全に呂律も回っていなく、かなり酒臭い。
夜も随分更けたきたので、そろそろやめていただきたい。
「実華、そろそろ自分の部屋に戻ってくれ。岸部さんに怒られるんは俺なんだ」
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