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ある夜の住宅街を、ある二人の少年が疾走している。道の隅をとことこ歩いていた野良猫は驚いて近場の民家の塀を駆け上がり、ゴミ捨て場に集まっていた烏数羽が飛び去っていく。
「一体、何でこんな時間帯に行かなきゃなんねぇんだよ!」
「奴らに活動するのに適切な時間帯はない。とにかく、急ぐぞ!」
たたたたたたっ、と走る二人の少年は、紺色のブレザーを翻す。
緑丘高校。少年達の着ているブレザーは、栃木県緑丘市という開拓された街にある私立学校の制服だ。
雲に隠れていた月が姿を現し、少年達を照らす。
「大体、場所はわかるのかよ刹那?」
走りながら、隣の少年に質問を投げかけた短髪でスポーツマンという風貌の少年、空城修介。先週、緑丘高校の二年生に進級したばかりの男子高校生だ。
修介の質問に、『刹那』と呼ばれた少年は単調に答える。
「おそらく、かつて工業団地があった跡地に残っている廃工場だ。そこから、“闇”の雰囲気を感じる」
蒼海刹那。修介と同じく、緑丘高校の新二年生の一人。
二人の性格は、全くの正反対。だが、刹那と修介はいいコンビだと、彼らの周囲の人間は声を揃える。
刹那と修介は、“ある気配”を感じて、街の南にある廃工場に向かっている。
「ここだ」
刹那達が到着した工業団地の跡地には、一つだけ残ってしまった廃工場が佇んでいる。
しかし、どこか異様な雰囲気を漂わせ、来る者全てを飲み込まんとするぐらい暗い。
「嫌な感覚だ…。一つの大きな塊というより、細かな力が集結しているような感覚。奴らは数で来る。気を付けるぞ、修介」
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