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『相反するふたり』
「おまえさ」
会ってすぐなのに、もう私のことを、おまえと呼んでいるこの男性。その馴れ馴れしく関わろうとしてくる様子に、怪訝な顔をする私。
会ったばかりの人間にお前呼ばわりされたくない、なんてことを言うことすら、最早面倒くさい。
これまでの入院経験を踏まえて、相手に何か話しかけられて来ても、必要最低限のことだけ答えるか、最悪の場合知らんぷりするすれば良いと思い、今回実行しようとしていた。誰かと関わってツラい思いをする位なら、関わらないほうが良い。傷つくのは、もう嫌だったから。
だが、彼は執拗に私に関わろうとしてきた。
「おーい。何か答えてよ」
「何か」
「せっかくイケメン細マッチョが話しているんだからさ、もう少し反応してくれても良いじゃんかよー」
この男性は、随分と自意識過剰なようだ。バッサリと切ってやろうかと思い、言葉という名の刃を突きつける。
「自惚れんのもいい加減にしてよ、モヤシさん」
「え? 俺ってモヤシなの?」
「いや、突っ込むところが違うでしょ」
予想外の反応に、気が抜けてしまう。イケメンだとか、細マッチョという部分の否定よりも、モヤシだと言われたことが、印象に残ったらしい。
近付く者を突き放そうとする私と
人懐こく近付いて来る彼
この町に来て早々、変な人間に出会ってしまったと、そう思った。
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