第一章

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『優れた部分』 チチッ  それまで大人しくしていた雀が、何故か、どういう理由か、鳴き始めたため、私は思考を中断した。雀の鳴き声に、流石の彼も気付く。 「ん? 鳥?」 「……少し前からここにいる、飛べない雀よ」  あまり触りたくはないので、雀がいる場所を指差し、何処にいるのかがわかるよう伝える。ただ、この雀は飛べないようなので、ちょっとした動作で落ちる可能性がある。  少し目を細めながら、小さな雀の存在を確認しようと見る彼。見えているのだとしたら、結構視力は良いほうなのだろう。  はじめの私の呟きも聞こえており、何処の病室の人間が呟いた言葉なのか、わかっていたことから、聴力も優れているのかな、と考える。 「目が良い奴なのかなーとか思ってんだろ? これでも、俺2.0あるからな」  視力の良さ、聴力の良さに続けて、何を考えているのかがわかる……いわば、心を読む能力もある人間なのだろうか。益々、変な人間だとしか思えない。 「……変なの」  彼に聞こえないような声で、私はそう呟いた。
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