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『待合室にて』
入口に入ってすぐ目に入ってきたのは、かつていた大学病院の半分位の広さの待合室だった。ざっと見る限り、二十人ほどいるのだろうか?
母が手続きだか何かをすると言い行ったため、その間私は、待合室の片隅で待つことにした。
物心がついた頃から様々な病気にかかっており、私は絶えず入退院を繰り返している。
やっと目立って悪いような病気にかかることもなく、普通の生活が出来ると思っていた。
その矢先、先月に受けた健康診断で、私が心臓に重い病を抱えていることが明らかとなった。それまでずっとお世話になっていた病院を離れ、この町の病院に来た。
ドナーが現れるのを待つか、難易度が高く、まともに成功させることの出来る医者が国内にはいないとされるバチスタと呼ばれる手術を受けるか、どちらかしか私の生きる道はないのだと、医師から話は聞いている。
どちらも成功する確率は低く、また、術後生存率は低いことから、仮に成功したとしても、生きていられる保障は何処にもないのだ。こうしている間にも、私は確実に死へと近づいている。死神に肩を叩かれ、連れて行かれる日は、いつなのか。
程なくして、母の私の名前を呼ぶ声が聞こえたため、顔をあげると、何か書類のようなものを持って戻って来た。受付で指示された病室に向かうため、ベットで寝た状態の患者が運べるほど奥行のあるエレベーターに乗る。最奥の壁に背を預け、降りる階までの少しの時間、そうしていた。冷たい金属の壁が私の体温を少しずつ奪っていく。
母が一緒に乗っているにも関わらず、ひとりだけ取り残されたような感じがした。
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