第一章

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『疑心暗鬼』  私は小さい頃から病気がちで、幼稚園から中学校まで、まともに登校できたことはなかった。  友達を作りたいと思っても、入退院を繰り返す状況では到底叶うはずもなく、外で遊ぶ事も出来なかった。 「病気が治ったら、友達作ることが出来るよ」 「今頑張れば、痛い注射とか、苦いお薬がいらなくなるようになるからね?」 「先生は嘘は言わないよ。だから一緒に頑張ろう?」  どの医者も、私に言い聞かせるように、それこそ呪文のように同じことを言っていた。  けれど皆、根拠があって言っているわけではない。私への励まし……ただそれだけの意味の言葉なのだ。  小さい頃は、ただ純粋に医者の話すことを信じていた。  勿論、両親の言うことも信じて病気と闘ってきた。  二十四時間テレビという番組の中で取り上げられる、難病と闘う子供たちのように、私も前向きに生きていれば救われると思っていた。そう思うよう、取り組んできたはずだ。  けれど、そんな呪縛から解放されたのは、ほんの一瞬の出来事に過ぎなかった。現実はそう甘くないのだ。自分で言うのは嫌なのだが、“悲劇のヒロイン”として映画や何やら取り上げるにしても、本当に救えない程、これまで良いことは何もないのだ。  希望を持つだけ無駄と感じ、変に感情を表現するだけ損すると思うようになった私は、関わろうとする者を拒むようになった。
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