第一章

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『退屈な毎日の始まり』 「大河内さん。具合はどうですか~?」  愛想笑いを浮かべながらやって来たのは、病室に案内してくれた看護士の年配の女性。毎日三回、体調を聞きに必ず決まった時間にやって来るのだ。  また来た、と面倒くさそうに見る私の様子には気付いているのだろうが、マニュアル通りの対応をしているのだろう。 「別に。何も変なところなんてない」 「そうですか。それでは、血圧を計りますね?」  血圧を計る時に使うこの機械の締め付けも、もはやどうでも良いと感じていた。  今度こそ、こんな闘病生活とサヨナラをして学校に行けると思っていたのに。何故私はまた病院にいるのか……。  私の名前は、大河内 渚(おおこうち なぎさ)。  心臓の病気、「拡張型心筋症」のため入院をしている。  心筋症にも色々な種類があるようだけど、専門的なことはよくわからない。ただ、私の病気は、あまり良くはないらしい。  医者から両親は、私に残された時間についての話を聞いているのだろうが、私はその説明を受けていないのでわからないし、知りたくもない。  今のままならば、恐らく私は二十歳まで生きることは出来ないだろう。言われてはいないが、そんな感じがする。  医学の進歩により、心臓移植以外に、バチスタ手術を受ける方法もあるらしいが、必ず助かる保障もない上に難易度の高い手術らしい。  この日本において、それが出来る医者などそうそういないだろう。そんな人間が目の前に現れる、などといった少し前に流行ったようなドラマの展開があったら面白いかもしれないが、この場所ではまずありえないだろう。
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