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「おいお前ら!静かにしろ!」
担任の怒鳴り声に教室がだんだん静かになっていく。
そして教室内の生徒の視線は一気に俺へと向けられた。
「お前らも知っての通り今日から転校生が来ている!」
教室内にざわめきが戻った。声の中では男かよって声とかかっこ良くない?などの声が聞こえてくる。
ちょっと笑顔を向ければ黄色い声が増す。
単純な奴等だ。きっと知らない間に何度も何度も騙されてんだろうな。
「じゃ、自己紹介をしてくれ。」
軽く頷いてから口を開いた。
「初めまして。蒼宮真琴です。ちょっと訳あって編入することになりました。よろしくお願いします。」
俺の品の良さやら容姿やらに見とれているのか黙りこんでいる。それとも何か不満があるのか。
ま、俺には関係がないが。
「じゃあ窓際の一番後ろの席な。」
「はい。」
机と机の間を通って一番後ろの席に向かう。
歩く俺を目で追ってる奴が半分以上。そこまで注目させるほど俺はかっこよくはないと思うんだが。
この学校は相当イケメンに飢えているんだろうな。
「俺、山原徹(ヤマハラ テツ)よろしくな。」
席に座った瞬間、隣の席の奴がこっそり話しかけてきた。
山原と名乗った奴は制服もきちっと来ていて髪も染めていない様子だ。男子の中では可愛い系な類いの容姿だ。
「よろしく。僕はまだこの学校のこと分からないから後でいろいろ教えてもらえないかな?」
学校での俺の一人称は『僕』だ。別に可愛いぶってではなく紳士的に尚且つ大人っぽく見せる為に。
俺の性格の悪さを隠すための行為だ。
紳士的に振る舞っていれば大体の人は俺の嘘の性格を信じ込む。誰にでも優しくて嘘をつかない人間なんていないのに。
「おう。俺に任せとけ。じゃ休み時間にな。」
原山はそう言うと教卓の方に顔を向けて先生の話に耳を傾け始めた。
ホームルームが終わると俺の回りには人だかりができていた。
「蒼宮君は何処の学校から来たの?」
「お前どこの部活の入るんだ?サッカー部はどう?」
「真琴君って彼女とかいるの?」
「野球部だよな蒼宮!?」
質問攻めだ。
誰が何をいっているのか聞き取るのも難しい。
「落ち着いて、僕は一人しかいないんだから。」
最初は応えてられたけどいくらなんでも疲れた。
バカな質問しかしないし中途半端な不良しかいない。
そう。
俺が公立高校に入ったり理由はそれだ。
不良になりたいから。
。
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