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最大限の力を出して思いっきり坂下の手を振り払った。
俺の行動が気にくわなかったのかいきなり真顔になった。
だけど真顔、ではない気がする。
俺の気のせいなのか口角が少し吊り上がった気がする。
多分…気のせいだと思うけど…。
睨み合いがちょっと続いたあと坂下がこちらから見て左の上唇を軽く舐めていた。
それが何の行為なのかは俺には解らない、って言うか関係ないが。
「イラつく。」
低音の声が空気を振動させ俺の耳に届く。
さっき喋っていたときとは全く違う。
低くて、その場に存在する全てのものを圧倒する様な威圧感がある。
つい息をするのを忘れてしまいそうになる感覚。
俺の中の本能がこいつはただ者じゃないことを知らせる。
と同時に逃なければいけないという信号が送られてくる。
「悪い!じゃあ俺はこれで!」
今できる最大級の作り笑いをして急いでこの場所を去る。
後ろは振り向かない。
否、振り向けない。
一分一秒でも他に人のいるところに行きたかった。
「まこっちゃんさ、まだ具合悪いんじゃない?なんか顔色悪いよ。ほんと。」
心配そうに顔を除き込んでくる山原。
ありがとう、大丈夫だからと言えば納得したのかしてないのか良くわからない反応をされた。
「でもさ、今日は月に一回のあれがあるし、無理はしない方が良いと思うんだよね。」
「あれって…?」
あれ?俺にはなんの事かさっぱりだ。
学校に入るときも何も言われなかったし本当にわからない。
「あっれ?まこっちゃん知らないの?このクラスに入ってきたからてっきり知ってんのかと思ったよ。あれって言うのはな…」
「あれって言うのは…?」
―ガラッ
扉の開く音に話が中断されてしまった。
扉の前には坂下。
誰もが固まっていた。
そして誰もが口を開くことを止めていた。
俺だけが状況を掴めず何をして良いかわからない状態だ。
「来た…か。」
ボソッと呟く山原の声が聞こえた。
いつの間にかクラスのざわめきは戻っていて坂下も自分の席に座っている。
「あ、そうだ。それであれって言うのは簡単に言えば『ゲーム』だよ。でもただのゲームじゃない。各々が持っている特別な力を使って戦っていくんだ。まこっちゃんはどういう力持ってるの?俺はねペアが必要なの。相手の攻撃力を2倍3倍、それ以上にできる力持ってるんだ。勿論、攻撃も少しできるよ。」
「へ…へぇー…。」
。
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