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「アタシのゼピ様ぁ~ん!」
魔法効果が一番先に解けた松本は、落ちて行くゼピルムに駆け寄り懐から縄をだし投げた。
ゼピルムは松本から縄を受け取り何とはい上がってきた。
さすが魔法使いだな。
魔法に若干耐性があるとは。
「げっ!」
復活したゼピルムをみて魔王は目を丸くした。
『魔王様もびっくり』ってヤツだな。
「はぁはぁはぁ。
助かったぜ、松本」
松本に助けてもらったゼピルムは額の汗を拭う。
何カッコつけてんだか。
「バカバカバカバカ!
ゼピ様のバカ!
アタシをおいて死なないで!」
まるで少女マンガのように松本はゼピルムの胸板をポカポカと叩いた。
キモすぎる。
「……キャラ変わってないか?」
松本の変貌ぶりに魔法の解けた俺は思わず凝視した。
「バカだな。
俺の為に涙を流すなんて。
マイハニー」
そう言ってゼピルムは松本を優しく抱き寄せた。
……ってか、マイハニーって。
「ゼピさまぁん」
ゼピルムの胸に松本はそっと寄り掛かる。
やめてくれ~!
「松本……」
ゼピルムは松本を優しく引き寄せ抱きしめる。
禁断すぎるっ!
「おぇっ。
キモい」
魔法の解けたレイナは露骨に嫌な顔をした。
素直だな、うん。
「魔王様。
俺達は愛の逃避行にでます」
松本を抱き寄せたまま、ゼピルムは言う。
野郎同士で何やってんだよ。
「アタシ、ゼピ様がいいの」
オカマ松本と化した彼……いや、彼女は潤んだ瞳で魔王に言った。
何で乙女チックなんだよ。
「へ?」
魔王は情けなく口をあんぐりとあけている。
まぁ、そうなるよな。
「さようなら!」
松本を肩に担ぎ、ゼピルムは走り去った。
「ちょっと待てゴラァ!」
魔王は叫ぶが二人は松本の魔法を使い、遥か遠くへ行ってしまった。
城内に魔王の叫びは虚しくこだました。
そして俺らはどう対処していいかわからなくなっていた。
何なんだよ、この展開は……。
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