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新しい仕事を取る為に、久保田さんは俺らにとっては重要な人だって事は俺にだって解ってる。
久保田さんが、見掛けによらずイイ人なのも判る…。
多分…。今、一番わからないのは俺自身の気持ち。
何故かモヤモヤと不完全燃焼な、居心地の悪さを感じるし、久保田さんとの関わりを億劫に思ってしまう。
やっと酒が抜けた体に、またビールを流し込みながらボーッと店内を眺めて居たら、コンッと肘を小突かれて藤原さんが耳打ちして来た。
「おい。あっちの奥の個室に北野建設の常務と社長が来てるらしいぞ。」
「北野建設って、今かなり伸びて来てる会社ッスよね?」
「なんや、お前知らんのか?あそこ、去年上場してるしな。しかもお前、次のコンペに社長が来るって…」
「そうなんや、なら、藤原さんの出番ですね。」
「アホ。お前もええ加減、ゴルフせーって話やろ。今回は昨日の接待も少なからず役に立ってるし、お前が自分で仕事取るチャンスや。」
厨房の方に入って行く大久保さんの背中を眺めながら、藤原さんは小さい声で言ってきた。
昨日の接待………か。
また、嫌な事を思い出してしまう。
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