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     12月の初め頃。 仕事が終わってから、急いで着替えて藤原さんの家に行くと、黒い高級車が停まっていた。誰でも知ってるドイツ製の車だ。 車の中には、ゴリラみたいなおっさんが乗っている。どっかで見たこと有ると思ったら、近所の居酒屋のオーナーだった。 「うっす。遅くなりました。」 「おつ。一也ちゃん!」 藤原さんが車の横に立っていて、軽く手を上げた。 軽く藤原さんに頭を下げて、運転席にも頭を下げた。 「炉屋(いろりや)のオーナーさんですよね。お久しぶりッス。」 「ああ、久し振りやな。久保田言います。よろしゅうな。」 「あ。植草一也です。」 思わず、フルネーム言ってもうた(笑) 「まあ、とりあえず2人共車乗ってよ」 久保田さんは外見の厳つさとは対照的に、柔らかい笑顔で俺らを車に乗せてくれた。 「藤原さん、今日現場行って無いッスよね?」 俺の質問に対して、答えて来たのは藤原さんではなくて久保田さんだった。 「コイツは昼から勝手に店に上がり込んで呑んでたよ(笑)仕事なんて全くしてないって!」 「マジっすか!?藤原さんそれ羨まし過ぎッスよ。」 「何言ってん!お前しょっちゅう二日酔いで仕事休んでるやろォ!若者はしっかり働かんかい。」 そんな会話をしながら和やかに麻衣の待っている場所に向かった。 「ほんで一也。今日来る娘はどんなこらやねん?」 藤原さんに聞かれたけど、俺も知らない。 「イヤぁ...20代後半だと思うんすけど、あんまり俺も知らなくて。 」 「ふぅん。可愛い娘来るんか?」 「全然判らんッス。」 前に乗っている2人は、急に静かになった。 そんな事言われてもねぇ...。 もう、麻衣に託すしかネェか。 あの麻衣の事だからあんまり期待は出来ないんだけど。 ハァー。 俺は心の中で深いため息をついた。
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