第2章 郷愁と現実

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「ただいま~……って、誰もいないのか……」  帰ってきたのはいいものの、いつの間にか親父と母さんの2人は俺がいない間に外出しているみたいで、現在家に居るのは俺1人だけのようだった。 「まぁいっか……」  親父たちが帰って来るまで、とりあえず部屋の片づけをすることにした。  荷物はそんなに多くあるわけではないから、片付けに要した時間は30分ぐらいだった。 「ただいま~」  丁度母さんたちが帰宅し、部屋を出て、階下して出迎えることにしたの、だが……。 「お帰り、あれ親父は? 一緒じゃなかったのか?」 「お父さんは、聖耶が通う高校に転入手続きしに行ったわよ」 「あぁ、そういえばそんな事言ってたな……。それで母さんはどこ行ってたの?」 「聖耶の制服を取りに行ってたの」  スッと俺の制服を手前に突き出す。 「今回は随分と早かったな」 「急遽、こっちに行くことを聞いてすぐに瞳ちゃんに頼んで今日に間に合うように準備してもらったのよ。流石に今回は日数的に余裕が無くてちょっと苦労したみたいなんだけどね……」 「……あとで瞳さんにお礼をしに行かないとな」 「大事にしなさいよ、あの子が苦労して準備してくれたんだから……。とりあえず部屋のクローゼットにでも入れてきなさい」 「そうだな、そうするよ」  新品の制服を片手に俺は部屋へ戻って、母さんに言われた通りにクローゼットに制服を収納させ、階段を下りる。それに合わせるかのように親父が帰宅した。 「親父、おかえり」 「あぁ、ただいま。――とりあえず転入手続きは済んだから、明日職員室に来なさいだそうだ」 「ありがとう、親父……」 「おう……何回もすまないな」 「大丈夫だよ、今回は海斗や文乃がついてるから平気だよ」 「そうか……。多分これで最後だと思うから、思う存分高校生活楽しみなさい」 「おう、もちろん!」 「そんな所で話してないで、こっちで話したらどう?」 「だそうだ、行くか」 「だな」  親父と共にリビングへと行き、それぞれソファーに腰を掛ける。  そういえば、と俺は座って直ぐに口を開いた。 「さっき、久々に紅葉ヶ丘に行ってきたんだけどさ、そこに丁度良く海斗と文乃が居てさ~」 「へ~、そうだったんだ、2人とも元気だった?」  台所で用を済ました母さんが、麦茶を持ってきて、話に参加してきた。
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