第2章 郷愁と現実

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 翌日、かなり早めに家を出て、音楽プレイヤー片手に一人登校する。  学校についたのはいいのだが、相変わらずと言ってもいいほど職員室の場所が分からない……。  まぁ、大方1階の生徒用の昇降口付近にあることが多いのだが……今回は一体どこにあるのか……。  そんなこんなで俺は20分誰にも声を掛けられることも無く、何とか職員室に辿り着いた。 「失礼します。本日より金沢高等学校より椛第一高等学校に転入してきました、近藤聖耶ですが~」  恐る恐る職員室に入りそれなりの声量で自己紹介をすると、数人の教員が俺の方を見る。その中から一人、つい見惚れてしまうほどに綺麗な顔立ちをした女性が俺のところへとやって来た。 「君が聖耶君ね、ようこそ、椛高等学校へ」  丁寧に一礼をしてきたので、とりあえず礼をする。 「ここで立ち話しもなんだから、とりあえず私について来てくれるかな?」 「は、はい」  言われるまま、俺は教員に応接室へ案内された。 「とりあえず、そこに座って」 「あ、はい、失礼します」 「……そういえば、紹介がまだだったね、君が行くクラスの担任を勤めている葛城さくらです。生徒からは、さくらちゃんの愛称で呼ばれてるから近藤君もそう呼んでね」 「気が向いたらそうします」 「そんなつれないこと言わないでよ~」 「そんなことより、色々と説明していただきたいのですが……」 「はぁ……しょうがないわね~」  それでも教師か、あんたは――。  けど、学校説明に入ると人が変わったように真面目に話してくれた。  所要時間はそれほどではなかったが、HR開始時刻となっていた。 「さて、そろそろ行きましょう、みんな近藤君の事待っているから」  応接室を出て、一歩一歩教室へ歩み寄る。
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