第2章 郷愁と現実

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 その状態のまま、教室に入ると、あっという間に笑い者にされてしまった。  本当に恥ずかしくて、死にたいぐらいだった――。  そして、授業の真っ最中――。 「どこに行ってきたの、聖耶?」  ちょっと心配そうな表情で文乃は俺を見た。 「ちょっと校内探検してたら、先生に捕まっちまって……もう最悪だよ……」 「ふ~ん、でも、満更でもない顔してる」 「べ、別にそういうわけじゃないって……」 「まぁ、文乃考えすぎだ、せっかく昔みたいな賑やかな学校生活を送れるんだ、いきなり険悪な雰囲気はやめようぜ」 「……もう、仕方ないなぁ~、しょうがないからこの辺にしておいてあげる」 「それでこそ、俺の“幼馴染み”だよ」 「……“幼馴染み”……か」  一瞬文乃の表情が暗くなった、ような気がした。 「ん、どうかしたか? 文乃」 「……ううん、何でもないよ」  何かを隠すかのように作り笑いを浮かべて誤魔化しているような感じがした。 「……そうか、それならいいけどさ――」 「近藤君、桐沢さん。話をするのは別に良いけど、せめて声のトーンを落としてもらえないかしら? みんながそっちの会話に聞き入って、授業どころじゃないです」  そう言われて初めて気がついた。クラスの半分以上が俺らの方を見ていた。そして、先生の注意を聞いて、他の奴らもこっちを見始める。 「あ……。す、すいませんでした、授業続けてください」 「あんな話を聞かされたらみんな気になるわよね~。というわけで、急遽、授業はここまでにして、近藤君の歓迎会及び、近藤君と桐沢さんの関係でも聞かせてもらうとしましょうか」  その瞬間、歓喜の雄叫び……と、まではいかないが、それなりにクラスの盛り上がりに俺と文乃、それと海斗は少々戸惑いを隠せなかった。  その後、色々なことを洗いざらい吐かされた挙句、案の定海斗も巻き込まれた。  結果、放課後を迎えるまでひたすら質問攻めに遭い、そのせいで俺と文乃の二人は少しぎくしゃくしていた。
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