第2章 郷愁と現実

11/12
前へ
/40ページ
次へ
 ――そして、その放課後。 「聖耶、帰ろうぜ……」  鞄を片手にし、気だるそうに俺の所へやって来た。 「お、おう……。文乃、帰ろうぜ」 「ちょっと待って、これ書かないといけないから……」  そう言って俺に学級日誌を見せる。 「それ、時間掛かりそうか?」 「う、うん、少し時間が掛かると思う……」 「それだったら、ちょっとその辺ふらついてるから、終わったらメールくれ」 「うん、分かった、ごめんね私の為に……」 「いいよ、んなこと、それじゃ頑張れよ」  俺は教室を離れ、とある場所へ向かった。  長い階段を上り、屋上へ出た。 「やっぱり、屋上はいいな……」  フェンスの方まで行き、野球部やサッカー部などの外で活動している運動部や、そのまま下校する生徒の姿を見下ろす。 俺はこういう景色は結構好きだが、それでも日中の青空やこの夕日に染まった赤い空を見るのが一番好きだ。  今まで通った学校のほとんどは、こうしてよく屋上に来てはこの景色を見て心を落ち着かせていた。  その理由としては、中学に上がったときに何となく放課後に屋上へやって来たのが全ての始まりだった。まるでそこだけが別世界のように想えた。それ以来、どこの学校でも自然と屋上へ足を運ぶようになった。  暫く、その景色を眺め思い出に浸っていると……文乃からメールが来た。 「――さて、戻るか」  屋上を去り、教室へ向かった。 「お待たせ――って、あれ、いない……」  携帯を取り出し、開くと――。  海斗からメールが届いていた。 「どうしたんだ? ――っ!!」  メールの内容に絶句した……。  俺は慌てて教室を飛び出し、メールに記された場所を目指し、俺は全力で校舎内を走り回った。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加