第3章 煩乱

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 【  】あぶない!!  少女の顔に靄がかかっていて誰か判別が出来なく、俺はその少女に向かって喉が張り裂けるんじゃないかってくらいに大声をあげ、少女の下へ走って行く。  そして、少女の元へ辿り着いてはすぐに勢いよく突き飛ばしてしまった。その瞬間、右半身に途轍もない痛みに襲われ、気がついたら目の前に少女が涙を流し俺を見ている。  何かを口にしようと思った、その時――。 「――――はっ、はぁはぁ……一体、何だ、あの夢は……?」  たらり、と流れる汗を拭き取り、俺は布団から出る。 「……嫌な夢だった、あの夢に出てきた子、雰囲気といい、声といい誰かに似ていたような気がするけど、あれは一体だったんだろう?」  そんなことを考えつつ、汗でびしょびしょになったシャツを替えて、その上から制服を着る。  着替え終わり、部屋を出ようとしたとき……。唐突に昨日の事を思い出してしまった。  ただ、昨日はふとあんなことを思ったけど、あれは考えすぎだ、と内に秘め、部屋を出て階下した。リビングへ入るといつもの様に母さんは台所で朝食の支度を、親父はソファで新聞を読んでいる。 「聖耶、おはよう。もう少しで朝ご飯出来るから顔を洗ってきなさい」 「おう……」  そうそうに洗面所に向かい、顔を洗い、再びリビングへ戻る頃には丁度良く朝食の準備が出来ていた。  手早く朝食を済ませ、時間はまだあるものの俺は鞄を手にし、 「――行ってきます」  ややトーンの低い声で言い残し、静かに家を出た。  学校に向かっている間、今朝見た夢の事が忘れられず『一体あれは何を意味していたのか……』と、ずっと考えていた。
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