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紅葉町を去って早6年が経った。
俺はあの日幼馴染みの文乃と交わした約束を忘れず過ごしてきた。いつか紅葉町に帰ってこれる日を夢見て――。
紅葉町は名前の通り紅葉がかなり有名で秋になると町は観光客で賑わっている。俺はそれを見ているのが少し好きだったりする。
俺、近藤聖耶は6年前までは紅葉町に住んでいた。
だけど親父の仕事の都合で町を離れることになってしまい、そこで一緒に遊んでいた友達や親友、そして幼馴染みとは離れ離れになってしまった。
それから向こうの生活に慣れ、新しい友達が出来、普通の日常を送っていたのだが――。
突然それは起きた。
その日は日曜で、俺はいつものように普段より少し遅めに起きて一階のリビングへ行き、母さんは台所で色々と洗い物をしていて、親父はソファーに座って新聞を読んでいた。
さっき起きたばかりで少し寝ぼけてはいたものの、何とか椅子に座れた。
「さっさと朝食済ませてね、聖耶に話したいことがあるから」
「話したいこと?」
「そう、だからさっさと済ませなさい」
なんか上機嫌で喋る母さんの様子に少し疑問を抱く俺だったが、とりあえず朝食にありついた。
「――ご馳走様でした、と。んで、話って何なの?」
食器を台所に運んだ後、俺は母さんにさっきの話を振った。
「とりあえず、そこに座りなさい」
「あ、あぁ」
母さんに言われるままに俺は近くの椅子に腰をかけた。
「突然過ぎるけど、聖耶にとっては良い話があるの。お父さんの仕事の都合でまた紅葉町に帰ることが出来るの」
「ま、まじで!?」
「そうなのよ。初め、お父さんにこの事を聞かされたときお母さんびっくりしちゃった。聖耶良かったね」
「な、何が?」
「また海斗君と文乃ちゃんに会えるわね」
「そういうことか……」
「なんか嬉しくなさそうな感じに見えるけど、もしかして嫌だった」
「いや、正直凄く嬉しいよ。でもあまりにも急な事だったから思考が追いつかなかっただけだよ」
「そう? それなら良いけどね」
「正直こんな事を言うのは俺らしくはないけど、何か、ありがとう……」
「聖耶がそんな事を言うなんて、今日は雨が降るんじゃないか? なぁ、母さん?」
「そうですね」
「降らねぇよ! 母さんに話を振るな! そして母さんもそれに答えるな!」
そんなこんなで、引越しの準備を始めてあっという間に引越し当日を迎えた。
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