第1章 再会

4/4

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
 そして、海斗は俺の方を指差し、 「――聖耶」 「え、――せ、せい、や?」 「よっ、文乃。それに海斗、久しぶり……というより、ただいま、だな」  俺の姿を見た途端文乃は目にいっぱい涙を溜めて、 「せ、聖耶~っ!!」  突然俺に抱きついてきた。不意打ちをくらった俺は少し対応に困ったが、一先ず文乃の頭を優しく撫でていると、ふと、こうして文乃の頭を撫でていたあの頃の事を思い出し、この感じが懐かしく思えた。 「どうしたんだ、急に帰ってきて……また何かあったのか?」 「たまたま親父の仕事の都合で、またこっちに戻ってくることになったんだ。それ聞いて正直驚いたよ」 「ふ~ん、そうだったのか……」 「つか、お前ら大分雰囲気変わったな、最初見たとき一瞬誰か分からなかった」 「あの頃と全く一緒なわけないだろ。そういう聖耶は全然あの頃と何一つ変わってねぇよ」 「何も変わってなくて悪かったな……文乃大丈夫か?」 「う、うん。ゴメンね、ちょっと嬉しくて……」  そう言って文乃は俺から離れた。少し名残惜しさを感じたが、流石にそんな事は口に出せるわけもなく、その代わりにもう一度文乃の頭を撫でた。そして、改めて一言。 「……文乃――ただいま」  涙を拭いて、精一杯の笑顔で文乃は、 「おかえり、聖耶っ!」  再び抱きついてきた。その衝撃で倒れそうになったが、何とか止まれた。右手で頭を撫でて、 「聖耶、おかえり」 「おう! これからまたよろしくな、海斗」  空いている左手で、海斗と拳を合わせた。  これが俺らの六年ぶりの再会であり、これから起きる物語の始まりを告げた瞬間でもあった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加