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そして、海斗は俺の方を指差し、
「――聖耶」
「え、――せ、せい、や?」
「よっ、文乃。それに海斗、久しぶり……というより、ただいま、だな」
俺の姿を見た途端文乃は目にいっぱい涙を溜めて、
「せ、聖耶~っ!!」
突然俺に抱きついてきた。不意打ちをくらった俺は少し対応に困ったが、一先ず文乃の頭を優しく撫でていると、ふと、こうして文乃の頭を撫でていたあの頃の事を思い出し、この感じが懐かしく思えた。
「どうしたんだ、急に帰ってきて……また何かあったのか?」
「たまたま親父の仕事の都合で、またこっちに戻ってくることになったんだ。それ聞いて正直驚いたよ」
「ふ~ん、そうだったのか……」
「つか、お前ら大分雰囲気変わったな、最初見たとき一瞬誰か分からなかった」
「あの頃と全く一緒なわけないだろ。そういう聖耶は全然あの頃と何一つ変わってねぇよ」
「何も変わってなくて悪かったな……文乃大丈夫か?」
「う、うん。ゴメンね、ちょっと嬉しくて……」
そう言って文乃は俺から離れた。少し名残惜しさを感じたが、流石にそんな事は口に出せるわけもなく、その代わりにもう一度文乃の頭を撫でた。そして、改めて一言。
「……文乃――ただいま」
涙を拭いて、精一杯の笑顔で文乃は、
「おかえり、聖耶っ!」
再び抱きついてきた。その衝撃で倒れそうになったが、何とか止まれた。右手で頭を撫でて、
「聖耶、おかえり」
「おう! これからまたよろしくな、海斗」
空いている左手で、海斗と拳を合わせた。
これが俺らの六年ぶりの再会であり、これから起きる物語の始まりを告げた瞬間でもあった。
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