No.標

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別にそう言われたのがショックなわけでもない。ジルの言う通り、今も然程変わりないが任務ばかりだったレイは常から色々と沸点が人より低い為、部屋も性格の通りにシンプルになったのだ。 だからあともう少し何かを置いてみるか…と思う。 「椅子…でも買うか」 お金は任務のお陰で有り余り程あるしナルカが日曜日に出掛けると言っていたので、その時にでも一緒に何かを買うことにする。 時計を見るともう23時を回っていた。ナルカに時間を食われてしまったが、大していつもと変わらないので良しとした。 ベッドに倒れるようにして寝転べば、スプリングが利いて身体が少し跳ねる。 そしてほんの数秒も経たない内にレイの意識は薄れだした。段々と思考回路が鈍くなっていき、瞼が重くなってくる。 「…ん…眠……」 ぽつりと呟きを溢すと同時に限界で瞳を閉じたのだ。 最後に夢を見たのはいつだっただろうか、忘れてしまう程前のことのよう。 夢なんて見ても良いことなんてひとつもない。あの時見た夢も…そうだ、俺があんな夢を見なければ皆殺されずに済んだんだ、と何度も何度も見えない相手に謝った。 レイにとっては夢を見るということは、父さんと母さんを含んだ街のよく見知った住人が殺されるのを思い返すのと等しい。その夢を見た後日、今はもう厳重な牢獄に入れられ一生出てくることはないが…ある男に家族と自分以外の人々を殺されたのだ。
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