No.標

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「ナ…ディ…?」 違和感を感じたらしい母親が苦しそうに言葉を紡ぎながら、水を変えに行くと言ったナディに声を掛けた。 だけど何も誰も返事をすることは無い。一度目は疑問の意を込めたモノだったが、二度目は明らかに違ったモノ。 「ナディ…?…ナディ!」 どうやら母親も咄嗟に扉の裏に隠れたレイの姿に気付いていないらしく、母親は覚束無い足取りでナディが動かなくなった場所まで歩く。 一体、どうしたんだ?何かあったのか?と心配そうな色を感じさせながら…ほんの数センチを歩いた。 そして―――、何かが母親の足元に転がってくる。 「…ナディかい…?ナ……っ!?ひぃいい゛い!!」 突如、腰を抜かした母親の声が悲鳴へと変わったのだ。 何事かと思わずレイは隠れていた扉の裏から出て来て、母親が腰を抜かしてへたり込んでいる場所を見た。 「……っ!?」 流石のレイもこの時は驚きを隠せないで居た。何故なら…水を変えに行くと言って部屋を出ようと振り返った直後、ナディは何者かの手によって殺されたのだ。 人(ナディ)の死体を実際にしかも目の前で見た恐怖とナディを失った事に、色んな感情がせめぎ合い母親を襲う。 「ぁ…あ…ああ゛…」 ナディナディと言いながら非情にも身体から離されたナディアの頭を、母親は手繰り寄せる様にして抱きしめる。 「……………」 終始二人の姿を側で見ていたレイは、いつの間にか開けられていた窓に気付いた。
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