No.標

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気付かぬ間にでも落としたのか?と思いながらその辺りを見てみるも、それらしいモノは見当たらない。なら何故、つい先程までずっと持っていた筈の携帯が無いのだろう。 怪訝に思いつつ床に落としていた視線と俯いていた顔をす…っと上げていけば―――、にこやかに笑みを携えレイの携帯を持ちながら立っていたのだ。 「……返せ」 「…ダメだよ。僕と一緒に居る時は、僕を見ないと…ね?」 怪しい様な妖艶な様な意味深な笑みを浮かべて言う。 そのまま笑みを絶やさずレイに近付いて来るや、端整な二人の顔が近付く。 「…これは俺の任務だ」 長老が何を言ったかは知らないがお前が出る必要は無い、とあと数センチどちらかが顔を動かせば唇が触れそうな距離の中、真っ直ぐ見据えて告げる。 ―――そう、これは俺一人の任務。 トンっとジルの肩を押してレイは床に踞っている母親の元に向かおうと一歩、踏み出そうとした。…が、それは叶うこと無くレイの目の前にあった母親の頭部が床に転がっていたのだ。 反射的に勢い良く振り返ると案の定、ジルの顔には僅かに血液が付着していた。 そして静かに視線だけを向ければ鎌には大量の血液が滝の様に、流れていた。 「あーあ、汚れちゃった」 ペロリと舌で頬や口に付着した血液を舐めとり、鎌を見つめながら楽しそうに口角を上げていた。
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